なぜ自己肯定感が低いのか
「私なんか何をやってもできない」
と思ってしまう根本には、理想の高さがあるのではないかと予想しています。
・満点をねらう基準で勉強したからこそ、強く緊張してしまうテストもあれば、
・勉強をしていないからこそ、逆に吹っ切って臨めるテストもありませんか?
自己肯定感が低い子は「良い結果を出さなくては……」という意識が、自分の現状に対して高すぎるという傾向があるように思います。
・100点取りたいのに、なかなか勉強に向き合えない
・全教科100点取ろうとして自分のキャパシティが間に合っていない
・いきなり100点を取れないことを理解できておらず、30点しか取れなくて諦めている
↑上記のような状況が積み重なり「自分はもうできない」と思い込む状態が、自己肯定感の低さを生んでいるではないでしょうか。
分かりやすいので数値化できる「勉強」を例に挙げましたが、「スポーツ」や「人間関係(学校で上手くやる)」など、何においてもこの考え方は当てはまるのではないかと思います。
僕が何よりも恐れていることは、勉強・スポーツ・人間関係の不出来ではなく、
「自分はもう何もしたくない」という無気力な状態になってしまうことです。
抽象画の特徴
自己肯定感が低い子の特徴は、「理想からの逆算」にあるように思います。
意識的でも無意識でも、抱いている理想に叶わないという逆算する思考法が自己肯定感の低さを生むと思います。
アブストラクトソートで採用している
アルコールインクアートは、「理想を絶対に描けない」ことが特徴です。
↑コチラの作品は「来年への期待」を込めて、年末に僕が描いた作品です。
最初から、こういった作品を書こうと思ったわけではありません。
実際にやってみるとよく分かりますが、液体をドライヤーで伸ばすインクアートは、コントロールすることが極めて難しい技法です。
色鉛筆でのスケッチのように、確定した線を引くことはできません。
消すことも、やり直すこともできません。
描きたいテーマ(例えば、近況・希望・喜び・困難)をぼんやり頭に思い浮かべたら、色を選んで真っ白な紙に投じていきます。
ウサギのような、具体物を描くことは決してできません。
抽象画は、目に見えないものを描くことに適しています。
そんな抽象画ですが、何を描いても「どうせ抽象的な色なのだから……」と投げやりになってはいけません。
大切なことは、一生懸命に思いを込めて描くことなのです。
理想のゴールにはどうしても到達できない。
だけど、一生懸命に取り組んだ軌跡は残るインクアート。
自分が何かしらの意味を込めて、一生懸命に描くからこそ、ただの色に「意味」が与えられるようになります。
完成した作品は、勉強・スポーツ・人間関係とは異なり、優劣がつきません。
インクアートは、どの絵も等しく美しいです。
このように描いた作品は、他者との美しさの比較ではなく、自ずと自分自身の達成感に向かうようになります。
アルコールインクアートという抽象画作成に取り組む中で、
・他者と比較することなく
・自分のテーマを探究する姿勢
を身につけることができます。
Abstract Thought(アブストラクトソート)での取り組み
アブストラクトソートでは、ただアルコールインクアートに取り組むのではなく、自分自身と向き合うために下記の要領でワークショップを進めています。
1. アルコールインクアートの説明
まずはシンプルに、アルコールインクアートの説明をします!
2. 考え方の説明
説明書を用いながら、
・「上手い」「下手」は関係ないんだよ
・「思った通りにできない」のはあたりまえなんだよ
・描き方の正解はないよ
・見えるものでなく「目には見えない気持ち」を描いてみよう
・最近どんなことがあるか思い出してみてね
・最後はインクアートに取り組むなかで気づいたことを「ノート」に書いてみるよ
本ブログの、1つ前のセクションで説明した考え方に加えて、
最後はインクアートに取り組んだ中で気づいたことを、ノートに書くと伝えています。
文字にすることで、自分が感じたことを「より深く自覚」することができるからです。
3. アルコールインクアートに挑戦
ようやくインクアートに挑戦してもらいます!
「最近のこと」「勉強」「悩み」といったテーマで描く子もいます。
基本的に、僕は図々しく尋ねることはなく、自由に取り組んでもらいます。
また、90分のワークショップでは、2~3枚の絵を描くことが出来ます。
4. ノートに書く時間
最後は、今日の経験を振り返りながらノートを書きます。
言葉にすることが難しい子は、自分が書いた絵をボーっと見る時間に使ったりしています。
大切なのは、美術経験をきっかけにして
「自分に対して考えを巡らせる時間」
「客観的に自分の想いを見つめ直す時間」
を取ることなんです。
※この間に僕は、描いてくれた作品をせかせかとデータ化します。作品は、実物を持ち帰れるのはもちろん、データ化もしてメールでお送りします。
以上でワークショップは終了になります。
他者比較をやめて「自分の願い」に気づける感性を
「自分軸で生きる」
「自立する」
「自分なりの美学を持つ」
「自分の哲学を持つ」
といった言葉が叫ばれる時代です。
僕自身も、子どもたちに対して
「自分なりの願い」を持っているがゆえに、生きがいのある人生を送ってほしいと願ってやみません。
「ただ公務員になる」のではなく、
「○○市をより良くする仕事」をしたい。
「ただ掃除をする」のではなく、
「大好きな〇〇という場所がもっと素敵」だと知ってもらいたい。
「ただ教師になる」だけではなく
「人に向き合うことができる先生」になりたい。
「ただ生きる」のではなく、
「自分なりの楽しみ」を持って生きたい。
他者との優劣ではなく、「自分の願い」を持って生きる。
そうすれば、自己肯定感という考え方を超えて、自分の変化を楽しむ人生が歩めるのではないかと思っています。
もし、周りと比較して自己肯定感を下げてしまっている子がいるならば、
誰かと比較することなく自己と向き合う感性を磨くことができる「Abstract Thought」のアルコールインクアート体験に、足を運んでくれたら嬉しいです。
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